『サウンドライトニング』

2025/12/28

電子工作大図鑑

t f B! P L

音に反応して光るイルミネーションを作ります。

背景

「作ってきたえて能力アップ」との、本の言葉を信じて作品を作ります。

(当記事内で「本」と呼びます↓)

作品名『サウンドライトニング』。音に反応する度に8個のLEDが順に尾を引くように光るから「ライトニング」(雷)だそうです。想像力の豊かさを感じる名前です。

ブロック図

図1.『サウンドライトニング』ブロック図

マイク(ECM)出力をトランジスタ2段で増幅してシフトレジスタIC74164に入力。この74164にはタイマIC555からのクロックを常時入力しており、クロック立ち上がりでECM側からの電圧変動("L"電位)をとらえれば、その"L"がシフトレジスタを順に移動しながらそれぞれ出力のLED8個を順に点灯させていく仕組みです。

タイマIC555のCLK出力は周辺の定数より以下の通り。

RA=RB=24kΩ、C2=10μF

H期間:Th=0.693×(RA+RB)×C2≒33.3ms

L期間:Tl=0.693×RB×C2≒16.6ms

周波数:f=1.44÷{(RA+2×RB)×C2}=20Hz

主な部品

1・ECM

ECM(Electric Condencer Microphone)、つまりマイク。音を電気信号に変えます。本には「ECM(小型)」とだけ。

写真1.ECM(C9767BB422LFP

在庫から型番C9767BB422LFP。仕様は電源電圧1~10V。今回の回路は4.5V電源ですからこれで問題ないでしょう。


2・NPNバイポーラトランジスタ 2SC1815

電子工作定番の小信号用バイポーラトランジスタ(NPN)。2SA1015(PNP) とのコンプリメンタリ・ペア。元々の生産元であった東芝では生産終了。海外メーカの互換品が出回っており、今回使うのも互換品です。

写真2.NPNトランジスタ(2SC1815)

3.タイマIC 555

これまた定番、有名なロングセラーIC。今回CLK発振源として使います。

価格が安く、多用途に使え、安定性が高いことによって世界中で広く使われるようになったICであり、たとえば2003年の1年間だけでもおよそ10億個が生産され[3]、これまで製造された中で最も有名な集積回路となった[4][5]。

(Wikipedia「555 タイマー」より抜粋)

写真3.タイマIC(555)

4.シフトレジスタIC 74164

シフトレジスタIC。入力データ(H、L)をCLK立ち上がりで取り込み、以降CLK立ち上がりの度にレジスタを1bitずつシフトします。今回は各レジスタ出力に電流制限抵抗を介してLEDを点滅させます。

写真4.シフトレジスタIC(SN74LS164N

本では「74HC164AP」。そのシリーズ違いの「SN74LS164N」ですが、今回の回路では代用できるはず。

ロジックICのシリーズで一般的なのは74HCの方。"HC"はHigh speed CMOS。一方、代用品は74LSシリーズのもの。"LS"はLow power ShottokyでTTLベース。両シリーズは電圧閾値が異なり、回路で混ぜると信号伝達に事故を起こしかねません。さらに74LSシリーズは”Low power”と言いながら消費電流も大きい(昔としては低消費電流だったらしいが、現代基準では大きい)らしいので、選べるなら74HCシリーズを選んだ方が良いのでしょう。
この辺の流れはWikipedia『汎用ロジックIC』をご興味あればどうぞ。

製作

1.ブレッドボードで回路の動きを知る

ECMの出力が想像つかないので確認しながら回路を組んでいきました。

写真5.ブレッドボードで動作確認

74164への入力信号ですが、思っていたのと様子が違います。

CH1(赤):ECMからの入力
CH2(黄):555からのCLK入力
写真6.74164入力信号(指鳴らした)

写真6はECM間近で指を鳴らした波形(それくらいしないとECMから出力が出ません)。CH2(黄)のCLK信号はおおよそ計算通りの22kHz。これに対してCH1(赤)のECMからの電圧が瞬間的に落ち込んでますが、あまりに瞬間的なためCLK立ち上がりで捉えきれません。
CH1(赤):ECMからの入力
CH2(黄):555からのCLK入力
写真7.74164入力信号(音楽再生した)

写真7はECM間近のスマホで音楽再生した波形(音量かなり大)。

断続的にECM側から入力あるのですが、それでも毎回のCLK立ち上がりにECM側からの”L”が入るわけでもありません。ECMの感度が鈍いのでしょうか。トランジスタ増幅段の抵抗を調節しても改善しません。

この作品の動画でもあれば、とネットを探しましたが見つかりません。仕方無いのでこのまま進めます。

2.基板カット。。。それと基材

ユニバーサル基板のカット。いつも通りアクリルカッターで目印程度に傷つけて、力任せにへし折ります。

写真8.基板カット

ところでこのアクリルカッターでの基板カット、本には「ユニバーサル基板」のカット方法と書かれていますが、その基材は紙フェノール(もしくは紙エポキシ?)前提かもしれません。一方、わたしの基材はガラスエポキシ(以降「ガラエポ」と呼ぶ)。

紙フェノール基板

紙にフェノール樹脂を含浸したもの。別名ベークライト基板(ベーク基板)。安価で加工性が良いので、プレスによる打ち抜きで民生機器用基板を大量生産する際に使われる。反面、機械的強度が低く、反りも生じやすい。通常片面基板として利用される。

ガラスエポキシ基板

ガラス繊維製の布(クロス)を重ねたものに、エポキシ樹脂を含浸したもの。電気的特性・機械的特性ともに優れている。上記の基板と比較して高価ではあるが、近年の需要増加により、価格は下がる傾向にある。

表面実装用基板として最も一般的に使われている。両面基板以上の多層基板に利用される。

(Wikipedia(「プリント基板」より抜粋)

本に写る基板をその色からガラエポだと思っていたのですが、よく見れば作品によって基板の色が違います。中には明らかな紙フェノールの色も。

写真9.紙フェノールのユニバーサル基板(わかりやすい色の例)

店で見比べたところ紙フェノールの色も様々。ガラエポっぽいものもありました。紙エポキシに至っては白っぽい。。。確証ありませんが、本の基板はガラエポではなさそうです。なにしろガラエポやガラスコンポジットの基板はアクリルカッターではカットできないとのネット情報が。。。まあ、へし折ったのですが。

実際ガラエポなら半日かけてへし折る基板でも、紙フェノールのもので試したら30分足らずで無理なくカット出来ました。無駄な労力でした。

そもそもガラエポを選んだのは、本業で基板(ユニバーサルではありませんが)と言えば、というほどになじみあったからでした。紙フェノール基板はよほど古い製品でしか見ませんし、紙エポキシは触れたこともありません。やはり本業ばかりでは頭が偏るのでしょう。

3.実装

本の通りに部品を基板に実装します。

写真10.実装図

何気に密集した配置です。実装の作業性、やり直し、波形確認を考えるならもっと余裕を持たせて素直にパターン伸ばした部品配置にすれば、とも思いましたが、筐体への組み込みのためには基板の小型化を目指すべきなのでしょう。やりにくくも感じますが、これも学びです。

写真11.実装完了

4.アクリル板加工

黒のアクリル板は台座用(写真12)。別作品の使いまわしです。いちいち新品用意してたら出費が大き過ぎます。穴を追加してヒートガンで加熱、木板で挟んで曲げました。

写真12.曲げ加工後のアクリル板

今回初めてアクリル板を曲げましたが、ヒートガン使っている間ずっと天井照明がチラつきました。ご家庭でヒートガン使う時にはブレーカーに注意です。

続いてディスプレイ部分の透明アクリル板を加工します。

写真13.アクリル板をカット

写真14.アクリル板と半透明付箋

切ったアクリル板に半透明の付箋(百均で購入)を切って張ります。本に書かれているのは「散光シート」ですが、多分大きな差は無いのでしょう。

写真15.ディスプレイ部分完成

ライトニングっぽく(?)貼りました。

5.組み上げ

基板と台座部分。写真16左側のクリップ2つに透明アクリル板を挟みます。

写真16.基板と台座部分

ちなみに、本ではクリップではなく「L字金具(小)」をラジオペンチで曲げて固定することになっております。クリップは百均で見つけた代用品です。

写真17.ディスプレイ取り付け

クリップにディスプレイを挟みました。

写真18.作品正面

背面には台座に穴をあけてトグルスイッチを付けております。

写真19.作品裏面
 

動作

動かしました。

動画1.動作

左から近づけたのはドライヤーの吸い込み側。相応の音量の継続的な音源として。これでもなかなかCLKのタイミングに合わないようで、点灯がまばらです。
これが作品として正しい動作なのか確認できませんが、良しとしましょう。

感想

本、こと「電子工作大図鑑」は月刊誌「子供の科学」の連載をまとめたもの。「子供の科学」の対象読者は小中学生。よってこの本も小中学生向け。

小中学生、すごすぎます。

基板の基材を正しく(ガラエポを避けて)選び、オシロスコープで波形見てECMや回路の動作を把握。ECMに足を付けたり、小さな基板にグニャグニャに曲げたすずメッキ線を基板ランドに固定するはんだ付けはなかなかの器用さが要ります。オシロスコープもそうですが、アクリル板を曲げるヒートガンも買うのでしょうか。色々買いそろえるとそれなりの出費ですが。そして動きを見たこともない作品を回路組んで完成させる。必要な情報が一冊の本にすべて載っているわけでもなく、ネット検索して補って。

逆に言えば、この程度を大変に感じるわたしのスキルは小中学レベル以下なのでしょう。道理で本業で落ちこぼれ、「トランジスタ技術」も読みこなせないわけです。。。

(念のため「トランジスタ技術」について↓)

『トランジスタ技術』(トランジスタぎじゅつ)は、CQ出版社が発行する電子工学専門月刊誌。1964年10月創刊。毎月10日発売。

~中略~

電子工学などのハードウェア全般や電子工作に関する記事が中心であり、『エレクトロニクスライフ』等、他の電子工学系の雑誌が次々と休刊(事実上廃刊)していく中、代表的な電子工学系の雑誌として真空管時代から現在まで生き残り、『トラ技』(とらぎ)と呼ばれプロにもアマチュアにも愛読されている。

(Wikipedia(「トランジスタ技術」より抜粋)

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