一列の星(LED)が左から0~5個のいずれかで点灯します。ランダムな「スターレイティング(Star Rating。星マークの格付け評価)」装置です。
背景
実力無いのに電子回路設計の職場にまぎれ込みました。本の文言「作ってきたえて能力アップ!」を信じて付け焼刃します。
(当記事で「本」と呼びます↓。内容は月刊『子供の科学』の連載記事)
原理
CLK発振源はNOTゲートを3つ連ねたリングオシレータ(IC1)。間にR2、C1とで遅延をかけます。
プッシュスイッチ(SW1)を押している間、CLKがD-FF(FlipFlop)を6つ連ねたシフトレジスタ(IC2)に入ります。
初段から5つのD-FF出力はそれぞれトランジスタ(TR1~5)のベースに入り、そのコレクターエミッタ間のON/OFFでそれぞれのLED(LED1~5)を点滅させます。CLKが入るたびにLEDの点滅状態が次のように変化します。
※”●”:消灯LED、”○”:点灯LED
CLK LED1 LED2 LED3 LED4 LED5
0 ● ● ● ● ●
1 ○ ● ● ● ●
2 ○ ○ ● ● ●
3 ○ ○ ○ ● ●
4 ○ ○ ○ ○ ●
5 ○ ○ ○ ○ ○
6 ● ● ● ● ● ←シフトレジスタ/CLR
7 ○ ● ● ● ●
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プッシュスイッチを押している間のLED点灯は目に見えない程度に速く変化しており、離すとシフトレジスタへのCLK入力が途絶え、以降そのタイミングの点灯状態を続けます。操作者から見ればプッシュスイッチを離す度にランダムな0~5個のLEDが点灯するわけです。
計算
1.リングオシレータのCLK周期と周波数
図2のIC1、R2、C1の関係から、多分おおよそ次の通り。
周期T≒2×時定数τ=2×R2×C1=2×100kΩ×0.1μF=20ms
周波数f=1÷周期T=50Hz
...厳密ではありません。
”時定数τ”(タウ)は0から最終値の63.2%に到達するまでの時間です。それに対してNOTゲートSN74HC04はVIH(min)=3.6V、VIL(max)=1.35V(VCC=4.5V)。それぞれ対VCC(4.5V)で80%、30%。ですがこの辺計算しても、実測値(後述)に対して精度上がりませんので(むしろ下がった)、このままにします。
ところで、R1の1kΩはCMOSロジックの入力保護でしょうか。実測で短絡させても変化が見えず確かなことはわかりませんでしたが、NOTゲートSN74HC04の入力容量Ci=10pFに対して1kΩ入れることで急峻な跳ね上がり/下がりを鈍らせたい意図かもしれません。
2.LED電流制限抵抗
図3のLED1、TR1、R8によって次の通り。
電源電圧:4.5V
砲弾型LEDの順方向電圧VF(min)=1.8V
砲弾型LEDの定格電流IF=30mA
電流制限抵抗R8=130Ω
LED駆動トランジスタのコレクタ・エミッタ間電圧VCE(min)=0V※最悪(電流がなるべく大きい)想定のための仮定
順電流IF’={電源電圧ーVF(min)ーVCE(min)}÷R8=(4.5V-1.8Vー0V)÷130Ω≒20.8mA<IF(30mA)・・・OK
抵抗1個の消費電力PR=IF’^2×R8=20.8mA^2×330Ω≒29.2mW<抵抗定格1/4W(250mW)・・・OK
主な部品
1.1極2投プッシュスイッチ
動作方式:モーメンタリー・・・押している間だけ接点変わり、離すと戻る
構成:C接点・・・COM端子(*1)の接続先をNC端子(*2)、NO端子(*3)いずれかに切り替える。
*1:COM(COMmon)。共通端子
*2:NC(Normally Close)。通常時COMと接続
*3:NO(Normally Open)。動作時にCOMと接続
「1極2投」=「1回路2接点」=「単極双投」・・・同義語。上記のC接点が1つ
2.インバータ(NOTゲート)IC SN74HCU04N
NOTゲート6ch入りIC.ネット情報によれば”HCU”の”U”は”Unbuffered Output”。
”HC”の場合、NOTゲート1つの中身が実はゲート3段連ねるように構成して波形整形しているのに対し、”HCU”のNOTゲートは中身もゲート1段の構成とのこと。これが増幅率が大き過ぎず、遅延が少ないとかで発振回路に適しているらしいのですが、本では”74HC04P”を例として挙げていたので今回は気にしなくて良いのでしょう。
ところで”インバータ(INVERTER)”はDC-AC変換を指す場合があります。
あちらはDCの正負を交互にひっくり返す動きからこの名で呼んでいるようですが、悪いことに電気分野同士のため割と混乱しがちです。
ロジックIC側を”NOTゲート”と呼べば解決だと思うのですが、SN74HCU04Nのデータシートには”HEX INVERTERS”と書かれております。できるだけメーカの呼称を優先したいのでこの辺り少々煩わしく感じます。
3.D-FF IC SN74HC174N
共通のCLKと/CLR付のD-FF 6ch入り。今回シフトレジスタとして使います。
4.NPNバイポーラトランジスタ 2SC1815
電子工作定番の小信号用バイポーラトランジスタ(NPN)。2SA1015(PNP) とのコンプリメンタリ・ペア。元々の生産元であった東芝では生産終了。海外メーカの互換品が出回っており、今回使うのも互換品です。
5.砲弾型LED
いわゆる『Lチカ』の主役部品。
発光部分を覆う、半透明(もしくは透明)のモールド樹脂の形から”砲弾型”と呼ばれます。このモールドがレンズとして機能するため、光が正面に集まる傾向が強いLEDです。周辺にまんべんなく光を出したい場合には拡散キャップを被せるなど方法がありますが、それなら最初からチップタイプのLEDを使った方が良いでしょう。
砲弾型のモールド樹脂は熱を内部に閉じ込めてしまうため、LEDの寿命を縮めてしまうデメリットがあります。さらに写真5のようなリードタイプであれば放熱経路がリード2本に限られ、ヒートシンクも付けられず、用途は低消費電力に限られます。
製作
1.基板実装
実装面です。
はんだ面です。
基板寸法が大きめですが、カットするのは手間なのでそのまま使います。
2.組み上げ
プリント板、その上を覆うアクリル板との二階構造を組み立てます。
なお写真8の部材は前回の『デジサイ』のものです。実は本の指定とは違うのですが、違うものを用意するのは手間なので流用しました。
写真9のアクリル板も過去の工作の流用です。余計な穴が空いているのはそのためです。
3.装飾
『ファイブスター』ですので、厚紙に星形をくりぬきました。
写真11の厚紙は日用消耗品の梱包箱から切り取りました。
この装飾が無くてもLEDをそのまま点灯させれば電子回路としては充分ですが、これもモノづくりの幅を広げるかもと思って工作しました。おかげではじめてデザインナイフというものを百均で買って使う経験ができましたので、これもきっと学びなのでしょう。
動作
R、Cにより遅延をかけた様子を確認しました。測定箇所は図4の3点です。
写真13の波形を見ると、a点の電圧変化がコンデンサの充放電でゆるやかになっており、それが次段出力のb点電圧に遅延をかけていることが分かります。
周期T(b点実測)=15ms ⇔20ms(計算)
周波数f(b点実測)=1÷T≒67Hz ⇔50Hz(計算)
実測値と計算値、近いといえば近いものの計算通りとは言いにくい程度です。
それにしてもa点の電圧、跳ね上がりが4.8Vp、跳ね下がりが-0.8Vp。これはSN74HCU04の推奨入力電圧VIの0V~Vcc(当回路の場合4.5V)から外れています。
a点の跳ね上がり・下がり自体は回路の原理通りのものです。C1の反対側の電圧変化がa点の電圧を押し上げ・引き下げることによるもの。この跳ね上がり・下がりがあるからこそ、a点の電圧が次段の入力電圧閾値(VIL、VIH)との電圧差が開いて、その電圧差が解消されるまでの放電・充電時間が回路の遅延を生み出します。ですが、ICの推奨を外れてしまうことについては何か別の方法を考えるべきなのかもしれません。
さらにb点を替えてc点を見ました。
b点と論理は同じですが、波形は整形されてb点では残っていたなまりが消えました。
感想
料理を前にしてその味の星を決めるのもいいですし、迷ったときに5つ星が出れば実行するとか、単純にサイコロの代わりに使ってもいいでしょう。使い方は工夫次第で広がりますね。
(本の『ファイブスター』、結びの言葉より抜粋)
・・・電子工作を趣味とすることへのカベを感じます。
わたしには”使い方”を見つけることができませんでした。ランダムな数が欲しいならサイコロや時計の秒針でこと足りるからです。この『ファイブスター』に限りませんが、工作がわたしにはムダにしかならない、作る前から分かっていることです。
そもそもLチカレベルの初心者が作れて、なおかつ使い道ある工作というのは難しく思えます。となると、ムダに見えるところをなお使い道を工夫して広げられる想像力、もしくは使い道が見つからないままでも次から次へと作っていける精神力、それが初心者段階を乗り越えて電子工作を続けていける素養なのかもしれません。
...次の工作に進みます。


















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